「立川からはじめる未来」 4: PLAY! に形を(1) インテリアは手塚さんに
昨晩、PLAY! のアートディレクターの菊地敦己さん(銀座のギャラリーG8で、第22回亀倉雄策賞受賞記念展 菊地敦己 2020開催中、9/2まで)に、「note読んだけど短いね」と指摘されましたので、もう少し長く書くことにします(水増しせず)。
東京・立川に、ミュージアムと子どもの屋内遊び場を核とする、新しい複合施設をつくる。大人から子どもまでが「遊び」を取り戻す。こうした価値観を示すために「PLAY!」という名前を決めました。
この概念に、どんな姿や形を与えるかが次の作業です。PLAY! とはどんな空間なのか。はじめまして、と名刺を渡したとき、PLAY! の文字はどんな表情をしているのか。この大役を、建築家の手塚貴晴・由比さんと、アートディレクターの菊地敦己さんにお願いすることにしました。
手塚貴晴・由比さんはご夫婦で建築に取り組まれています。いつも貴晴さんは青、由比さんは赤のシャツを着ています。2007年に竣工した代表作・立川の「ふじようちえん」をはじめとする幼稚園・保育園や個人住宅の設計で知られていて、空間の開放感、居心地のよさ、利用者のライフスタイルすらを変えてゆく空間づくりに定評があります。
貴晴さんは常に笑顔で、例えれば宇宙人のような人です。発想やコミュニケーションが、遥か彼方からやってきます。トレーニングで鍛えた体全体で理想を熱く語り、依頼主を目指すべき方角に引っ張るリーダーシップがあり、目を離せば子どもたちとあちこちを駆け回ったりしています。由比さんもいつもニコニコと穏やかな笑みをたたえています。貴晴さん以上に胆力がありつつも、依頼主の話をよく聞き、冷静な観察眼を持っていて、理想と実際の狭間を埋めていくことにも長けています。二人の持ち味の掛け算で「ずっといたくなる場所」を作ってきました。(この文章は2008年の「アーツ&クラフツ展」のために寄稿いただいたもので、このときからご縁が始まりました)。
大人から子どもまで楽しめる、圧倒的に気持ちのいい環境を作る。そのためには、手塚さんがぴったりでした。ただ、ひとつだけ懸念がありました。それは、依頼が建物全体の設計ではないということ。建物自体はデベロッパーがつくり、PLAY! はテナントとして入居するので、お題はインテリアだけになります。少し不安を覚えながら貴晴さんに電話をしました。
「あのね、うちは内装だけはやらないんです。建物と内装って一体のものでしょう。だけど、何だかおもしろそうですね。やりますよ!」
嬉しかった。手塚さんにお願いしたことは三つ。ひとつ目は「ミュージアムと子どもの遊び場」という、提供する内容や来場者が異なる二つの場を有機的に結びつけること。もっとも重要なポイントです。二つ目は「持続可能なミュージアム」。一般的な美術館は、展覧会ごとに新しく壁を立てたり塗装をしますが、ここは釘やビスの穴も気にしない、使いながら味が出るような壁や空間にしたい。最後は「これまでになかった子どもが自由に遊ぶ施設」をつくること。手塚さんはこの「子どもの施設」に、並々ならぬ情熱を注ぐことになります。